第二十一話「出来るなら」――草原の上の崖の上…一同はそこにテレポート(瞬間移動)していた。ゲンキ「…ここは…。」 ゲンキは、辺りを見回してそう言った。 ホリィ「…崖の上みたいね。」 それに、ホリィはそう答える。 ライガー「……上手く行った様だな。…珍しく。」 スエゾー「珍しくは余計や!」 ライガーの言葉に、スエゾーはそう抗議した。 グミ「下見て~、グレイがあんなにちっちゃ~い♪」 グミモンは、崖の下に見える黄色いものを指差してそう言った。 …その言葉に、一同も崖の下を眺める。 チョコ「本当だ。ぼく達探してキョロキョロしてる。」 アメ「あ、どっか行くぞ。」 チョコモンとアメモンは、崖の下の黄色いものを眺めながら、そう言った。 サンダー「……まさか本当に逃げ切れるとは。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ほとんど冗談のつもりだったのに。」 サンダーは、一同の後ろでポツリと呟いた。その言葉に、一同は一斉に振り返った。 オルト「……冗談…だったのか?;」 オルトは、静かにそう聞いた。 サンダー「うん。…だってまさか逃げ切れる、な~んて思ってもみなかったし、それ以前に皆がそっちを選択するとは思わなかったし…。」 サンダーがそう言うと、一同はがっくりと肩を落とした。 グミ「なんだよ~、それ~。」 ため息を吐きつつそう言うグミモン。 チョコ「…じゃあ、サンダーはグレイと戦っても良かったの?」 チョコモンは、訝しげに首を傾げてそう聞いた。 サンダー「そりゃ……できれば、避けたかった。…でも、それしかないなら、戦うべきだって、そう思った。」 サンダーは、目を伏せてそう言った。 アメ「…じゃあ、何で“逃げる?”なんて言ったんだよ。」 アメモンは、そうツッコミを入れた。 サンダー「あれは、反語だったんだよ。…後に言葉が続いたの。」 サンダーは、むくれる様にそう言った。 スエゾー「…せやったら、アレの続きって何やったんや?」 サンダー「あのね…“逃げるわけにいかないんなら、戦うしかないじゃん?”って言おうと思ったの。」 スエゾーの言葉に、サンダーはそう答えた。 ゲンキ「…そう…だったんだ…。」 ゲンキは、そう呟いた。 サンダー「そ。…だからまさか、逃げる事になるとは思ってもみなかったんだよ。………そりゃ、おれだって自ら進んでグレイと戦いたい、とは思わないけれども。」 サンダーは、一度大きく息を吐いて、そう言った。 アメ「…ケドさ、グレイがあーなったのって、イービルスパイラルを着けられてるからだろ?…だったら、それを壊しちゃえば、元に戻るじゃんか。」 アメモンは、人差し指をピンと立てて、そう提案した。 ゲンキ「そうなのか?!」 チョコ「うん。…イービルスパイラルは、イービルリングと違って受信塔がないのが厄介なんだけど、でも、壊しちゃえばその効力は切れるんだ。」 ゲンキの言葉に、チョコモンはそう答えた。 サンダー「・・・・・・・・いやいやいやいや、あのさ、チョコモン、アメモン。…目の見えないおれに、どうイービルスパイラルを破壊させろって?」 サンダーは、困ったようにそう言った。 オルト「…サンダー、そのイービルスパイラルを壊すのって、どうしても自分でやりたい?…オレ達には任せられないワケ?」 オルトは、真っ直ぐにサンダーの目を見て、そう言った。…すると、サンダーは俯いて考え込んだ。 ライガー「・・・・・サンダー。やはり…自分でケリをつけたい、か?」 ライガーは、静かにそう言った。 サンダー「…………できるなら。出来るなら、グレイはおれが、おれの力で助けたいし…護りたい。」 サンダーは、顔を上げてそう言った。 アメ「…ケド、出来ないんだよな。」 アメモンは、冷静にツッコミを入れた。すると、サンダーはちょっと落ち込んだようだった。 ゲンキ「なあ、サンダー。お前にはオレ達が―仲間がいる。…一人で全部背負い込もうとするなよ。」 ゲンキは、ニッと笑ってそう言った。…すると、サンダーの目から涙が流れた。 一同「サンダー?!」 一同は、サンダーの涙を見て驚いた。 何故なら、彼等は今まで、サンダーの涙を滅多に見た事がなかったからだ。 ゲンキ「あ、えっと…; そんなに嫌だったか?」 ゲンキは、うろたえてそう言った。するとサンダーは、フルフルと、首を横に振った。 サンダー「嫌なんじゃなくって……何か、嬉しかった。…そしたら、涙、出てきちゃって……。」 サンダーは、泣きながらそう答えた。 オルト「あ~…お前そういうのには、涙腺弱いもんな~。」 オルトは、苦笑してそう言った。 サンダー「だって~~~…。」 サンダーは、そう言いながら、泣き止もうと頑張る。 ゲンキ「え~っと…なぁ、サンダー。…ちゃんとオレらも手伝うから、だから、もう泣かなくていいから…な?」 ゲンキはそう言って、サンダーの頭を撫でた。 サンダー「・・・・・・・・・・・・・・うん。」 サンダーは、そう言って頷いた。 (でも…それでも、グレイはおれが守りたい……それが、おれの債務だから…) サンダーは、そっと心の中で呟いた。 |